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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2012年8月13日)

   
 コットンの織目と風合いを残すためシェラックを薄くしみこませたバーテープ
  
握った感じがとても気持ちよい 加工後20年経過


アドベンチャーサイクリングとバーテープ

 

 自転車旅行に相応しいハンドルバーというと、やはりドロップバーということになる。上り坂・下り坂、のんびりと走るときとスピードを出して走るとき、郊外と市街地等走行条件によって握る場所を変えられるというのは誠に好ましい。さらに握る場所がいくつもあるということは、ライディングポジションがかえられるということ。体が一つのフォームに束縛されることがなくなり、疲労やストレスの軽減にもなる。その中でもランドナーバーやスリーポディションバーと呼ばれるタイプは長距離サイクリングやアドベンチャーサイクリングには最適だ。

ところがドロップバーにはそのどこでも握ることができるという特徴が故に、普通の自転車にあるグリップというものがない。というよりは取り付けようがない。で、その代わりに使われるのが革や布、ビニール、その他クッション材のテープで、それをハンドルバーに螺旋状に巻き付けてグリップとする。私たちが使用する旅行用の自転車だと、その手触りの心地よさからコットンや革のものが愛用されている。特にこれらの材質は汗の吸収もよく握り心地も爽やかで疲労の軽減にもつながる。

しかし耐水性や耐腐食性、耐久性はというと・・・・・、決して良いとは言えない。転倒等で破けてしまうこともある。たとえばコットンテープは、雨季の熱帯地域などで使用していると、手汗や土ぼこりでヌルヌルの状態となり、やがて腐り2~3ヶ月で朽ち果ててしまう。絶えず新品に巻き替えられる環境であれば問題はないが、アドベンチャーサイクリングともなると難しいものがある。その結果、金属むき出しのハンドルバーのまま何日も走りつづけなければならないということになる。唯一体が直に触れる部分だけに不快なものだ。

ということで、いつまでも快適にハンドルを握るため、アドベンチャーサイクリスト向けに二つの方法を紹介させていただくことにしよう。

       
       表面に艶が現れる程度にニスを塗布したバーテープ
       汚れたら水拭きするだけでいつもきれい    加工後20年経過

【その1】 バーテープを重ね巻きする

コットンバーテープの場合幾重にも巻き重ねることが可能。また重ねる回数に比例して耐久性は増す。そうすることにより数ヶ月ぐらいのサイクリングであれば、どのような環境下でも帰国までバーテープの巻き替える手間はなくなる。しかもハンドルバー自体が太くなり握る面積が広くなるということや、わずかながらクッション性が増すことで、手のひらにかかる負担も少なくなる。さらに手汗の吸収量が増すことで爽快感も持続する。

コツとしては、テープを強く引っ張りながら固めに巻くこと。そして一重ごとに巻く方向を変えること。それにより耐久性と握り心地をより向上させることができる。

また握る場所によって巻き重ねる回数を変えてもよい。オーストラリア縦走や北米大陸横断の時は、3重巻きを基本によく握る部分を4重巻きとしていた。

話はそれるが、握り心地とハンドル周りの美しさとのバランスでは2重巻きということになろう。それならば自転車の美しさを損なうことはない。

     
     3重に巻きその上をニスで固めたバーテープ(世界一周車)

【その2】 ニスを塗る

 乗車中は手袋をする方、握り心地より耐久性を優先される方であれば、コットンバーテープの上にニスを塗るという方法もある。ニスに使われる原料やニスの厚み、走行環境等にもよるが、世界一周ぐらいは何の問題もなくもってくれよう。

 ハンドルバーの上に塗るニスとしてはシェラックが一般的。カイガラムシのエキスを精製して作り出される樹脂で、アルコールに溶いてからバーテープに浸み込ませる。乾燥するとニス同様硬く硬化する。通常アンティークな家具や楽器に使われるものだが、ヨーロッパの高級自転車がこの方法を採り入れていたことから、日本のマニアの間にも広がった。透き通った茶色とも黄色ともいえぬ光沢のある質感が、絶妙な高級感を醸し出してくれる。ただしシェラックは耐熱性や耐水性に劣るため、走行環境によっては採用を検討するべき。

 それならばということで、アドベンチャーサイクリング仕様に試してみたのがウレタン系ニス。耐久性、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性ともシェラックを上回り、特に耐水性については極めて高く雨も手汗も気にならない。またどこでも手に入り、塗布作業も簡単。色の調合も可能で、自転車の色調に合わせることもできる。ただしシェラックのようなどことなくしっとりとした風合いはないので、塗り重ねすぎるとプラスティックの棒を握っているような感じになってしまう。目安としては、コットンの表面のざらつきが残る程度がちょうどよいようだ。

 ちなみにアドベンチャーサイクリングには、バーテープを重ね巻きした上にニスを塗り込むという方法もある。これならばどんなにハードな長旅でも、帰国までバーテープを気にすることはないだろう。


                                        鈴木邦友

  
    世界一周途でニス加工を施してから四半世紀
    今もまだその時の状態を維持している



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