※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2011年9月12日)
「折れないスポークⅠ」
旅先でもっとも厄介なトラブル、それはスポーク折れだ。アドベンチャーサイクリストの方であれば誰もがこの厄介さはご存知のはず。想い出したくもないという方も多いことだろう。
スポーク折れの多くはハブフランジに引っ掛ける頭部や首部でおきる。それ以外のところで折れるということはまずない。なぜそこばかり折れるかというと、そこに応力が集中するからだ。つまり折れなくするためにはその応力を分散させてやればよいということになる。
そこに発生する応力には、大きな力がかかったときに首部に発生するせん断応力と、車輪が回転するたびに頭部に発生する繰返し応力の二つに分けられる。ではそのどちらが原因でスポークが折れるかというとその多くは後者となる。前者はスポークに何かが絡まったとか横からぶつけられたとか、また乗り方が悪い等想定外の方向からの力がかかったときに発生するもので、通常走行でこのことが原因となりスポークが折れることはまずない。
①新JIS組み
ではどのようにすればスポークの頭部に集中する繰返し応力を和らげることができるのだろうか。今回はスポークのみに焦点を絞りその解決策を考えてゆくことにしよう。
①スポークを強めに張る:一見逆効果のように思われるが、スポークを強めに張ることにより振幅荷重を小さくすることができ、また多くのスポークに応力を分散させることができる。
②スポークを長く取る:同じハブ同じリムでもスポークの組取り方によってスポークを長く取ることができる。例えば36本組み車輪であれば、6本取りより8本取りの方が長く取れる。そうすることで引長ストロークが大きくなり、応力を分散させることになる。また同時に内側から外側へ挿されたスポークがハブフランジに沿う部分が長くなるため、首部が安定し応力が分散されさらに折れづらくなる。
③ハブ中心からハブフランジ穴を結ぶ線とスポークのなす角度を90度に近くする:これによりハブにトルクを与えたときのスポークに発生する応力が小さくなり、さらにハブとリムのずれが小さくなるため繰返し応力の発生を最小限にとどめることができる。
④新JIS組みにする:一般にスポークは内側から差し込み外側に出したものの方がその逆のものより強度は強い。つまりトルクを掛けたときに、それらのスポークに力が加わるようにしておけばスポークは折れづらくなる。(写真①)
⑤バテッドスポークを使う:せん断強度は引張強度の60~70%なので同断面だとせん断応力が発生する頭部や首部に応力破壊が起きやすくなる。自動車に使われるテンションボルト同様、折れづらい部分の無駄な強度を低下させることにより、応力を分散させる効果がある。
⑥頭部と首部が太くその距離が短いスポークを選ぶ:太くて短いものは単純に折れづらい。
その他にも、スポークのネジ部には必ず注油をしてから組み立てること。スポークをなじませるときには、スポーク首部に横方向の大きな力がかからないよう注意すること。スポークの張力が偏らないようにバランスよく組み上げてゆくこと等も効果は大きい。
鈴木邦友
スポークの方向に注意
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