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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2013年10月28日)

  

                 旅行用自転車

 
 
「ぺダリアン」125号で見つけた最新鋭アラヤ「スワロー」キャンピング車タイプなんとおしゃれなんでしょう

ぺダリアン125号の広告枠に最新鋭の旅行用自転車が掲載されている。最近の市場では全くと言っていいほど見られなくなってしまったフォーサイドバックのキャンピング車だ。しかもそのセンスたるやおしゃれで美しい。

広告の掲載は、大手国内マスプロメーカーのひとつ新家工業株式会社。あのリムでおなじみの大メーカー。アラヤといえば我々アドベンチャーサイクリストの世界では「スワローキャンピング」で有名。1960年代にはすでに本格キャンピング車としてデビューしている。ナショナルサイクラートリップキャンピング(池本代表が世界一周で使用)、片倉シルクキャンピング、BSダイヤモンドキャンピング等とともに長距離ツーリストの垂涎の的となった名車のひとつ。この最新モデルにも誇らしく「スワロー」の名が継承されている。

大手の製品ともあって、当然そこで使われる部品は現在販売されている中でも最新のもの。ハンドメイドビルダーから出されるオールドパーツてんこ盛りのそれとは異なる。壊れたらいつでも直せる、我々アドベンチャーサイクリストにとっても嬉しい一台だ。

 

 で、その最新鋭車をよ~く見ると・・・・・。

インチとインチ一分を組合せたチューブアッセンブル、トップチューブを水平にとり大きなスペースをもたせた前三角、下曲げのフロントフォーク。パーツもフルサイズの長~いドロヨケ、26インチWOのしっかりした車輪、一枚革のサドル、コットンテープの巻かれたスリーポジションのランドナーバー、アウターケーブルを外に出したブレーキシステム、スティール丸パイプ製のキャリヤ・・・・・。そのスタイルは旅行用自転車全盛の当時のものと全く変わりなく、その頃を知る者にとっては懐かしくも見える。

そう、最新鋭の旅行用自転車が再びこの形でデビューしたということは、旅行用自転車はその頃すでに完成していたということの証であり、この形が自転車旅行に最適であるということを決定づけている。さらにこれまでマウンテンバイクやレーサー等全く目的の異なる自転車に無理やりキャリヤやドロヨケをバンド締めし、不便を感じながらもそれをしいられてきた若き自転車旅行者たちが、やっと本物の旅行用自転車でする自転車旅行の素晴らしさに気づきだしたということでもある。買い物も通勤もデートも何でもかんでもクロカン4WDという妙な流行が自動車の世界で消滅したように。それよりなにより、私たちのクラブでも、今まで世界一周や大陸縦・横等をゆうゆう完走された方の自転車は、そのほとんどが旅行用自転車、いわゆるランドナーベースではないか。

 ではなぜこの形が自転車旅行、特に長距離旅行に相応しいかといえばそれは下記のとおり。

    インチ、インチ一分ベースのチューブ構成:

・フレームを無駄に硬くせず、ショックを吸収させることで乗員の疲労を軽減するとともに、パーツに与えるダメージも軽減する。

 ・衝突時に乗員へのダメージを軽減するクラッシャブル効果。

    スティール製チューブ:

・降伏点が高く、金属疲労に強い。

・修理(溶接)が容易。

    大きな前三角:

・外力からのチューブや接合部に対する影響が少ない。

      

・前三角内の収納能力が高くなり、大きなポリタンや長目のポンプが取付け可。

・担ぎやすい。

      
      大きな前三角 こんな大きなポリタンも収まれば、肩を通して担ぐにも便利
      それ以外にも他利点は多い

    下曲げのフロントフォーク:

・フロントフォークは自転車唯一のサスペンションとも言われ、乗り心地の向上は言うに及ばず、ロードホールディング性能の向上により、操縦性や安全性が格段にアップする。

     
     下曲げのフロントフォーク
     自転車唯一のサスペンション 乗り心地と安全性を司る大切な部分

    革サドル:

・人工素材のサドルは、お尻をサドルに馴染ませるしかないが、革サドルはサドルがお尻に馴染んでくる。乗員にピッタリの形状になる。馴染ませ方により硬さの調整もできる。


革サドル どんなに科学が進歩しようとこれに勝るサドルはない
ヨーロッパのベテランサイクリストたちは鋲を打ち直しながら一生使い続ける

    ランドナーバー:

・走行環境や身体状態により乗車姿勢が変えられ、効率の良いペダリングが可能となる。

  
  コットンテープが巻かれた旅行用自転車のためのバー
  ブレーキケーブルが外回しのためメンテナンス性が高い 輪行時も便利

    コットンバーテープ:

・汗を吸収し手触りが優しいため、疲労の軽減につながる。

    ブレーキワイヤーの外回し:

・交換が容易でメンテナンス性が高い。

・異常の早期発見が可能。

・輪行時等分解がしやすい。

    フルサイズのドロヨケ:

・悪天候・悪路時の快適性が高い。

・自転車に対するダメージの軽減。

・危険物や病原菌から乗員を保護。

    スティールパイプ製キャリヤ

・降伏点が高く、金属疲労に強い。

・修理(溶接)が容易。

 ・フレームやバッグに対するダメージの軽減。

    26インチ車輪:

・種類が豊富。

・丈夫。

・どのような路面にも対応。

・入手が容易。

    自転車全体として:

・ベースが一般車と同じのため、街の自転車店で修理が可能。

・互換性が高い。

 

 自転車専門誌でも自転車旅行の記事がページを賑わすようになってきた。そこに登場する自転車もランドナーやツーリスム等仏国式の旅行用自転車が主役となりつつある。ここだけの話だが、次のぺダリアン126号でも、本格旅行用自転車を紹介する特集が企画されているらしい。旅行用自転車とともに、自転車旅行の文化が確かのものとして定着しようとしている。

アドベンチャーサイクリングの世界もさらにエキサイティングにおもしろくなりそうだ。

                                     鈴木邦友

 
 1970年代の国産マスプロメーカー製キャンピング車
 ヨーロッパでは1960年代にはすでに完成の域に達していた


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