※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2014年7月22日)
飛行機輪行を考える
鈴木邦友
海外サイクリング。まず気になるのが自転車の運搬手段、いわゆる輪行だ。
機内に積み込まれる筆者の輪行袋 その上にはいくつもの荷物が・・・・・
通常の輪行であれば、私たち自身で管理することができるが、飛行機輪行となるとカウンターで輪行袋を預け、航空会社に全てをゆだねることになる。要するに何があっても自らはどうすることもできないということ。しかも旅行用のトランクやカバン等大型の荷物と一緒に扱われこともあり、たとえそれが自転車だとしても決して特別な扱いは期待できない。取扱注意のステッカーを何枚貼ったとしても、その他の荷物にも同じように貼ってあれば結局それらと同じ扱いとなってしまう。もちろん重いためか荷物を積み重ねられた場合、一番下にされる可能性も高い。
南米からヨーロッパに飛行するときのことだったか、空港の建物から飛行機に運ばれる貨物コンテナーを見て驚いた。なんと筆者の輪行袋はその一番下に横置きにされ、上にいくつもの大型旅行用トランクが積み上げられていた。スーツケースひとつ20㎏としても100㎏を越えている。何枚もの取扱注意ステーカーが貼ってあるにもかかわらず。
実際空輸中のトラブルについてはいくつも事例が上げられており、致命的なダメージで走行をあきらめてしまったという話も耳にしている。
そのうちのいくつかを紹介させていただくと・・・・・、
①
エンド幅がかわっていた。左右のエンドがくっついていた。
②
リヤ変速機のエンドブラケットが曲がっていた。折れていた。
シートチューブの切口(シートポスト差込口)が潰れていて、シートポストが入ら
①
なかった。
②
輪行袋が破れていて中から部品が落ちていた。
③
リムが「く」の字に折れていた。車輪が大きく歪んでいた。
④
チェーンホイールが曲がっていた。
⑤
車輪のクイックピンが曲がっていた。戻したら折れてしまった。
⑥
その他ドロヨケが潰れていた。キャリヤが曲がっていた、車輪が歪んでいたぐらいのことは普通のこと。
そのようなことが多いためか、最近では自転車専用のハードケースというのもある。しかし意外と高価で、また移動を繰り返し、同じ空港を利用することのないアドベンチャーサイクリングには不向き。現地での処分も大変。結果軽く荷物にならないコンパクトな薄手の輪行袋となる。
では、どのようにしたら大切な自転車を現地まで無事送り届けることができるか。そこのところを海外サイクリングのベテランたちに聞いてみた。
①
車輪を外したエンドにはつっかえ棒を挟む
フレームから車輪を外した場合、エンド部分に横からの力が加わるとエンド巾が狂ってしまうことがある。右と左のエンドがくっついてしまうなんてことも。
輪行専用のつっかえ棒も売られているし、木材や金属で自作しても良い。ちなみに筆者はスペアのシャフトを使っている。内側に玉押し等をセットしロックナットでがっちり締めておけば外れる心配もない。
車輪を外したエンドにはつっかえ棒を挟む 筆者はスペアのハブシャフトを使用している
②
リヤ変速機を外す
輪行をすると、リヤ変速機は結構出っ張るもの。トラブルの可能性も高い。というわけでエンドから外してしまう。今の変速機はたいていアーレンキー一本で外すことができる。そうしておけば変速機自体が壊れたりブラケットが折れたりすることはなくなる。
リヤ変速機を外す 最近の変速機はアーレンキー一本で簡単に外れる
なおワイヤーとチェーンはそのまま。その際変速機本体やチェーンはブラブラ状態になるのでフレーム等に傷をつけないようにひもなどで縛っておく。
チェーンはつけたまま ブラブラしないように縛り付けておく
①
サドルポストは抜かない
サドルは抜かずいっぱいに沈めて固定する。シートチューブの切り口はちょっとした衝撃で潰れてしまうからだ。潰れてしまうとどうなるか?シートポストが入らなくなる。しかも素人では修復は不可能。特にラグレス車は肉薄なので要注意。
もちろんサドルに衝撃が加わることになるが、とても丈夫にできているので壊れることは少ない。壊れても交換修理で対応できる。
シートポストは抜いてはいけない。いっぱいまで沈めてしっかり固定しておく。もしサドルを外さなければならない時には、同じ径のパイプを差し込みしっかり固定しておく
②
外した部品やネジ類は元の位置に戻ししっかり固定する
ネジや小物等は外しっぱなしにしない。必ず元の位置に戻し力を入れてしっかり固定しておく。そうすることによって振動でネジが緩んで外れ、さらに輪行袋が破れて落ちることはない。置き忘れの防止にもなる。
※ヘッド小物、ハンドルステム引き上げボルト、キャリヤ止めネジ、ドロヨケ止めネジ、ハブナット等
③
外した部品同士しっかり縛り付ける
輪行袋を数cmほど持ち上げ落としてみる。その際「ガチャ」と音がするようではダメ。金属同士がぶつかりあっているサインだからだ。硬いもの同士が接してい
るところはパッキンを挟みトーストラップ等でしっかり締め付ける。
※切れやすいバッグのベルトをトーストラップに替えておくと結構長持ちする。輪行の際には結束ベルトとして使える。4サイドバッグのキャンピング車であれば約20本のトーストラップが輪行時の結束用に兼用できる。
①
右クランクを取り外す
チェーンホイールは横からの力に弱い。衝撃を加えるとすぐに曲がってしまう。また結構精度を必要とする部品なので修復はとても厄介。ということでチェーンホイールはクランクごと外してしまう。以前紹介させていただいたシマノのワンキーレリーズやスギノのオーテックス等を使えばアーレンキー1本で外すことができる。ペダルを外すよりも簡単。もちろんペダルはクランクに取り付けたままでよい。(地球体験レポート2012年6月1日「優れものパーツ」参照)
ペダルをつけたまま右クランクを抜く(左クランクは抜く必要はない)。その時役に立つのがシマノの「ワンキーレリーズ」やスギノの「オーテックス」。アーレンキー一本で簡単にクランクが外れる
②
車輪のクイックレリーズを抜く
車輪をフレームから外した場合、クイックピンは抜いておく。輪行袋から出っ張る部分なので曲げられてしまうことがある。それを元に戻そうとすると必ず折れる。
※重装備車や悪路走行車、長距離走行車にはクイックレリーズ式ハブシャフトは不向き。そこで同じネジ山のトラックシャフトやマウンテンバイク用のソリッドシャフトに替えた方がよい(地球体験レポート2012年4月16日「ハブシャフトの折れⅡ」参照)
③
荷物をパッキン代わりに輪行袋に詰め込む
自転車が傷まないようパッキング
大きめなダンボールが調達できればそれで自転車をサンドイッチするように輪行袋に入れると、ダメージ防止に大きな効果がある。
また寝袋、着替え等をクッション代わりに出っ張った部分に詰め込む。どうせ運ばなければならない荷物を利用するので重量が増すこともない。
そのようにして自転車に直接ダメージが加わらないようにする。
着替えや寝袋等をクッション代わりに使う
自ら管理できない飛行機輪行にはどんなトラブルがあるかわからない。走る前から走行不能ということでは大変。
取扱注意のステッカーを張り完成!
万全の準備で楽しいサイクリングを!
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