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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2016年3月21日)

新・自転車メンテ術

 自転車と自動車、どちらも道という環境に存在し、人を乗せて走るもの。どちらも同じような材料から作られ、同じような使われ方をするもの。そしていつまでも大切にされ存在しつづけるものもあれば、飽きられてあっという間に捨てられてしまうものもある。大切にされているのにもかかわらず寿命を迎えてしまうものもあれば、自然の猛威によって朽ち果ててゆくものもある。自転車も自動車もともに同じような運命をたどってゆく。

 この二つの異なる乗物を使用する方もまた同じ、単に道具として扱うだけの方もいれば、目に入れても痛くない程溺愛している方もいる。溺愛している方の中でも、走って走って走り潰す方もいれば、ほとんど走ることなくいじったり磨いたりという方もいる。

どちらかと言えば乗物の世界は溺愛型の方が多いのではないだろうか。その証拠にサイクルショップもカーショップも休日はそんな方々でいっぱいだ。

 しかし一見同じように見える世界ではあるが一つだけ異なるところがある。それは市場の大きさ。そしてそれによる商品の種類と流通量。例えばタイヤ一つ挙げてみてもわかるが、国内で最も多く出回っている自転車用26×13/8リム用タイヤと、同じく国内で最も多く出回っている自動車用14インチホイール用タイヤとを比べてみると、前者は34サイズ数種ではあるが、後者はメーカー一社だけでも約30サイズ数十種以上の製品をラインナップしている。

 もちろんそれはただたんに種類や数量の差ということではない。市場の大きさゆえにどのメーカーも、絶えず新製品の企画・開発やそれぞれの製品のレベルアップ、そして価格の抑制という熾烈な戦いの中に身を投じている。その結果自動車業界全体の企画力や開発力の発展を促し、より優れた製品がよりリーズナブルな価格で多種多量に我々消費者に提供されるということにつながっている。

 市場の大きさと市場競争の激しさが、「多種・多様・高品質なものをより安く」を実現させ、より買いやすい市場を我々消費者に提供している。

 まっ、難しい話はここまでとして、ともかく一度カーショップをのぞいてみることをお勧めする。オートバックス、イエローハット、ジェームズ、DIYセンターの自動車用品コーナー・・・・・。いずれのカーショップも、足を踏み入れた瞬間大量の商品が広い店内に溢れかえっていることに驚かされる。華やかさも別世界だ。しかも日本中どこにでも存在しているのであるから再度驚かされる。

 もちろんそこに並ぶ商品のほとんどは私達自転車愛好家には無関係、自転車には何の役にも立たないものばかりだ。ところが全てが無関係の店内ではあるが、唯一私達が心を振るわせるコーナーが存在する。それは・・・・・、“メインテナンス・ケミカル用品”のコーナーだ。一言で言って「これは凄い!」

 冒頭でも述べたが、自動車も自転車もその素材はほとんどいっしょ、製造方法も似たようなもの。また最近は樹脂のパーツも多く使われているなんていうところも似ている。さらに同じ環境下で使われるものなので、劣化や腐食の原因も同じであればその過程も同じだ。つまりその抑止対策は同じ方法を用いればよいということになり、それに使う道具やケミカルも同じものでよいということになる。つまりこのコーナーにおいてあるものは自転車にも役に立つものばかりということになる。しかもその種類は極めて多い。 

では実際はその中でも驚くべき性能を持ち、自転車にも効果的な製品をいくつか紹介させていただくことにしよう。

まずその筆頭が補修用ペイント。スプレータイプのもの、タッチアップタイプのものともそのカラーバリエーションは目をみはるほどで、大抵の色は揃っている。もしちょうどいい色が無ければ、二、三色購入してブレンドしてみればよい。筆つきのタッチアップタイプのものはその手ごろな大きさと価格、使い勝手のよさから、既におおくのサイクリストが愛用している。旅行中バックの片隅に忍ばせている方も多いのではないだろうか。

 サビ止め、サビ取り剤も豊富。中でも驚かされたのがサビの上から塗れ、サビを化学的に変化させ、更にその塗膜で防錆までしてしまうというもの。刷毛塗りタイプとスプレータイプがあり、塗布後は化学反応で茶色の鉄サビを黒色の黒サビに変化させ、長期間サビの再発を抑制してくれる。レストアやしばらく乗っていなかった自転車のサビ処理にも効果的。

 サビ止めペイントにも興味がひかれる。サビ止めペイントとは、普通のペイントより防錆性能に優れたもの。それには下地の金属を完全に水や酸素から遮断するタイプと犠牲防食といって塗料自体が先に酸化して金属を防錆するというメカニカルな働きをするタイプがある。カラーバリエーションには乏しいが、見えない部分や下塗り塗料と考えれば十分だ。同じ色があれば、上塗りの必要もなく便利。

 “車体ワックス”も長い間愛車を保護するのには効果絶大。これは本来自動車のボディの内側に塗布する防錆剤。自動車には袋状になった部分が多く、しかもその部分は防錆処理が行き届かなかったり水がたまったりと極めてサビやすい。そのような部分をサビから守るためのケミカルだ。細いノズルをボディの隙間から挿入し、見えない内側に防錆材を塗布する。自転車でも手のとどかない“内側”といわれるところは多く、そのような部分に塗布しておけばそこからのサビを防ぐことができる。例えばフレームパイプの内部やコイルスプリングの内側、部品と部品の隙間、手の届かない複雑に入り組んだ部分等。ちなみに筆者はユーレ・アルビの甲羅の内側に塗布している。おもてから特に見えず、防錆性能低い部分には手軽で効果的だ。

 もちろん車体表面を磨くワックスにも注目されたい。最近のワックスはただ輝かせるだけのものではない。もちろん輝かせるのは当然の働きだがその他にも様々な目的をもったものが存在している。一度塗布すれば数ヶ月効果を発揮するものもあれば、塗装の細かな傷を消してしまうもの、防水効果の高いもの、表面に硬化膜を形成するもの、汚れを同時に取るもの、拭取りのいらないもの、水に混ぜて水拭同様拭き上げるだけのもの、汚れの上からスプレーして水で洗い流すだけのもの等。中には塗装色によって使い分けるようなものまである。いつまでも新車の状態に保っておきたいという気持ちは自動車愛好家も自転車愛好家も同じようだ。

クリーナーの多さにも驚かされる。しかもボディはボディ、タイヤはタイヤ、アルミホイールはアルミホイールとパーツ別に用意されている。しかも何百万円もする自動車に使うものということで、その性能の高さの割に材質にダメージを与えるものはなく安心して使える。ただし、いくらダメージは少ないとはいえ、メカニズムが全て剥き出しの自転車には注意が必要。大切な油脂まで洗い流してしまうことにもなるからだ。

劣化防止剤については言葉を失うほど。陳列棚の前で時のたつのを忘れてしまいそうだ。まず材質別に別れていること、次に部品ごとに分かれていること、また部品の使われている場所ごとに分かれていること、その他処理後の仕上がり別に分かれていること等驚くべき光景が目の前に展開している。例えばゴムの劣化防止剤一つとっても、紫外線によるひび割れを防ぐもの、硬化を抑制するもの、艶を出すもの、艶を消すもの、一度駄目になったゴムを再生させるもの、張付きを防止するもの、摩擦音を消すもの等。プラスティック用にしてもまた同じ。これを上手に使いこなせば、博物館など要らなくなるのではないかと思ってしまうくらい。長い時間、長い距離を走る私たちにとっても役に立つものばかりだ。

劣化防止剤同様我々を魅了するのが潤滑剤のコーナー。自動車のエンジンは通常走行状態で2,000rpm以上という高速で回り、1トン以上もあるその個体を移動させている。しかもそれは高速で長時間に及ぶ。そのような高回転、高負荷の過酷な使用において決して回転・摺動部にダメージを与えることなく長期間保持できる高性能な潤滑剤がそこにある。一般的な液体タイプのものからグリスタイプのもの、スプレー式のもののほかに、使う場所や使い方、使う環境別のものが用意されている。その中でもちょっと気になったものをいくつか紹介させていただくと・・・・・。

自動車の潤滑剤の中には、本来の潤滑剤に混ぜることによってその性能をアップさせる働きを持つ“添加剤”と呼ばれるものがある。ベースオイルの中に高濃度のモリブデンやフッ素樹脂(テフロン)を混ぜたものや、金属表面自体を化学変化させ、摩擦係数を低下させる効果を持つ物質を混入したもの、オイル自体の劣化防止剤や金属の腐食防止剤を多く含んだもの等。筆者はこの添加剤をそのまま自転車用油として使っている。もちろん愛車(自動車)に使ったあまりではあるが。特に効果が認められたのはモリブデンタイプの添加剤をチェーンに使用した時で、注油と注油の期間が延び、チェーンの音が静かになった、またチェーン自体の伸びが抑制でき、スプロケット自体の減りも少なくなる等の結果も得られた。(注意:ベースに潤滑油が使われていない添加剤はそのままでは使用しないこと。それだけでは何の潤滑効果も得られないものもあれば、中には金属表面の性質を変えてしまうものもある。)

ゴムやプラスティック用の潤滑剤というのも面白い。シリコンを主成分とする潤滑油で、液体とグリスタイプ、スプレー式のものがある。話はそれるが、昔サンプレの変速機について友と語ったことがある。その話の一つが、この変速機には潤滑剤を使うべきか使わざるべきかという問題であった。一般にプラスティックやゴムは油に弱いといわれている。そしてサンプレは舶来の高価な代物で、「油なんかさすと割れちまうゾ~」などと驚かされ、知識の乏しかった筆者は結局その高価な代物に一度も油をさすことはなく、大きな摩擦係数と無駄な負荷を与えながら大切にしているのとは裏腹に寿命を縮めるような使い方を続けていた。

もちろんこれは旧い自転車だけの話ではない。最近の自転車は樹脂の採用割合が高く注油に気を使うようになった。もちろん耐油性の樹脂が多く使われていることも確かなことではあろうし、注油不要の材質であることも少なくないが、なにせ筆者のような素人にはそのような判断は不可能。こんな時にもこれらの潤滑剤は役にたってくれる。

もちろんここで紹介させていただいたもののほかにも、我々自転車愛好家の知らない自転車に役立ちそうなものはまだまだ発掘できそうだ。それにより自転車の状態を良好に保ち、自転車の寿命をさらに伸ばすことになろう。もちろんそれは故障の抑制や性能の向上、しいては安全走行にもつながる。

               1.タッチアップペイント

 現行国産自動車及び輸入自動車のほとんどのボディ色をカバーする、お馴染みの速乾式補修用ペイント。筆が内蔵されているためどこでも簡単に補修作業ができる。サビる前に作業をするのがポイント。旅行中に携行しているサイクリストも多い。


            2.サビ止めタッチアップペイント

 サビ止め効果の高いタッチアップペイント。もちろん筆が内蔵されているためどこでも簡単に作業ができる。カラーバリエーションが少ないので、修復部分の下塗り塗料と考えればよい。もちろん同じ色のフレームカラーであればそのままでOK.

                  3.ジンクペイント

 亜鉛を含有するサビ止めペイント。二つの異なる金属を接触させるとイオン化傾向の高い方の金属が先にサビるという化学反応を利用したサビ取り用タッチアップペイント。鉄と亜鉛では亜鉛の方がイオン化傾向が高いことから、亜鉛を意図的に腐食させ鉄の腐食を抑制するという犠牲防食効果を利用している。色はマッドグレーのみなので、あくまでも下塗り用。


                4.樹脂用劣化防止剤

 高分子化合物、いわゆるプラスティックやゴム等の劣化防止剤。金属の腐食と異なり、一度劣化させてしまった高分子化合物の修復は極めて困難、樹脂の寿命=その個体自体の寿命となることが多い。高分子の劣化は溶剤の浸透による膨潤や組織の分解の他、紫外線と酸素による光酸化劣化が原因。それらによる劣化から樹脂を守るのがこれら高分子化合物用劣化防止剤。ゴムやプラスティックの他、オープンサイドタイヤのサイドウォール(化学繊維のもの)の劣化防止にも効果がみられるほか、ランプレンズの曇防止にも効く。更に一度劣化が進んでしまったもの進行の抑制や機能復活にも効果がある。なお、塗装面にも防食効果はあるが、白や明るいカラーの場合にはシミになることもあるので注意。


            5.POR15(サビ止めペイント)

 自動車のレストア界では、言わずと知れたサビ止め塗料。サビてしまった金属の上からそのまま塗れ、無気孔で金属のように硬く、しかも密着性に優れた耐久性の高い塗膜により、一度塗ってしまうと半永久的にサビの再発を抑制するという優れもの。どちらかというと愛好家よりも博物館向け?色は黒、シルバー、クリアの三色。一度乾くといかなる溶剤にも犯されないので、再度加工を施す予定があるものへの塗布は厳禁。皮膚につくと一週間近く取れない。


                     6.サビ転換剤

 サビに直接塗り、サビをサビ止め皮膜に変化させ、サビの再発を防ぐ防錆材。刷毛塗りタイプとスプレータイプがある。数分でみるみる赤サビが黒サビに化学変化し安定した防錆皮膜となってゆく。既にサビに侵されてしまった小物類のサビ再発防止に最適であろう。


                    7.樹脂用潤滑剤

 高分子化合物、いわゆるプラスティックやゴムを侵さず、更にそれらを保護する効果を持つ潤滑剤。油脂による樹脂の割れやゴムの膨潤等の心配がない。液体タイプ、グリスタイプ、スプレータイプがある。ゴムの防水パッキングやオイルシールを持つ摺動部や回転部、本体自体が樹脂製のパーツ、樹脂メタル等に使用する。サンプレ製高級変速機ももうこれで油脂による劣化の心配はない。


                    8.ワックス

 塗装別のもの、色別のもの、キズ消し効果のあるもの、なんと中にはワックス効果7ヶ月などという驚くべきものもある。こんなもので定期的に掃除していたら、きっとサビとか腐食などというものとは無縁となることであろう。


                   9.車体ワックス

 普通ワックスといえばクルマのボディ表面にかけるもの。ところがこれはボディの内側、見えないところに塗布するワックス。自動車のボディはその表面より水が溜まりやすい裏側の方がサビ易い。その部分をコーティングし水分との接触を抑えサビを抑制するのがこのワックス。ノズルの先に細長い管を装着し、ボディの隙間や水抜き穴から差し込み内面に塗布する。自転車の場合ステアリングコラムやシートチューブの内側、BBシェル内面、スプリングの内側や手の届かない細部、チェーンケースの内面等隙間や空間になりやすい部分、水が入りやすい部分や水が抜けにくい部分に塗布しておけば、たとえ内部に雨や汗等の水が浸入してしまっても、そのワックス皮膜の働きによって内部からサビに侵されるということは少なくなる。シートポストやハンドルステムをフレームに差し込む前に塗布しておけば、サビ付いて抜けなくなるなんてこともなくなるはず。


                     10.潤滑剤

 自動車の場合、潤滑剤は使う場所によって細かく分別され使い分けられている。そしてそれらの潤滑剤に混ぜることで潤滑剤自体の性能をアップさせる添加剤というものもある。この添加剤の中に、自転車用としてもなかなかいいものがある。そのまま簡単に使えるものとしては、ベースオイルの中に摩擦係数の少ないテフロンやモリブデンといった添加物を多く含んだものがあげられる。メカニズムが剥き出しで低回転高トルクの自転車には粘度の高さや添加物の濃度からしても丁度よい。ただし中にはそのままでは使えないものも結構あるので説明書きに十分注意。また「○○フルード」とあるのは潤滑剤ではないので使用は厳禁。 


                   11.クリーナー

 愛車はいつまでも綺麗な状態で乗り続けたいと思うのは、自動車の世界でも自転車の世界でも同じ。自動車を綺麗保つためのクリーナー類も豊富だ。他のケミカル類同様こちらも使うもの別に取り揃えられている。当然金属や樹脂類に優しいものばかりであるのが嬉しい。

鈴木邦友


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