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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2013年6月18日)

  

「ドロヨケ」 あまくみていませんか?


ルネルス車に見られる大きなドロヨケ補強版-これならばドロヨケを失うことはない 

 さまざまな自然環境、さまざまな道路状態、その中を走る長距離サイクリングで欠かせないパーツといえば、「ドロヨケ」。ドロヨケが有るのと無いのとでは、サイクリングに天と地ほどの差が出てくる。入浴の回数、洗濯の回数、そしてメンテナンスの回数等ことごとく異なってくる。もちろん衣服や装備、車両の性能や寿命にも影響が及ぶ。二、三日程度のサイクリングであればそんなに気にすることはないだろうが、何週間、何ヶ月、何年という長期間のサイクリングともなるとその差はあまりに大きい。

当然、泥だらけで汚い格好では食堂や商店に入るのもはばかられるし、宿では門前払いとなる可能性もある。しかも初めての人に会うときなど失礼な行為とみられる地域もある。結果、サイクリング自体がつまらないものになってしまう。

 さらに注意しなければならないのは、道路上には様々なものが存在しているということ。泥や石は言うまでもなく、金属片やガラス片といった危険物から、科学的な有害物質、土になる前の動物の死体や糞尿(人糞も)、その中に生息する小動物や寄生虫、微生物や細菌類等。ドロヨケがなければそれらはタイヤにより巻き上げられ、直接人体に付着したり鼻や口から吸入されたり、目や耳等体の粘膜部分から侵入したりということになる。鋭利なものが目に入れば最悪失明の危険や、寄生虫や微生物、細菌等が体に付着し、また体内に入れば風土病や伝染病に感染することにもなる。世界にはいまだに正体が明らかにさえていないものを含め様々な病原体が生息している。体がむき出しの自転車旅行では、ただでさえそれらに気を付けなければならないのに、あえてその危険に身をさらすことになる。それは世界を旅するものとして、極めて無知で恥ずかしい行為となる。これらからしっかり私たちを守ってくれるのがドロヨケだ。

池本代表や梶支部長、130か国を走りぬいてきた中西国際部長の愛車等、実際これまで悠々と世界を旅してきた方々の自転車には必ずドロヨケがつけられ、帰国まで維持されてきた。特に中西国際部長の車両は「何もそこまでしなくても」と思うくらいドロヨケに修理の手が加えられていた。彼らが無事に帰国したのもドロヨケがケガや病気から彼らを守り、さらに余計な負担を軽減させていたからだと考えられる。

 ということで自転車にドロヨケをつけるのだが、これがなかなか難しい。適当なものを適当に付けてしまうとかえって邪魔なものになるばかりか、トラブルの原因ともなる。

            高級車に多くみられる後ドロヨケの隠し止め-革パッキンを挟むことにより応力を分散させている

     
       前ドロヨケの隠し止め-大きなアタッチメントでドロヨケを押さえている

     
  L字金具を使った取付け方法-見た目は安っぽいが、最もトラブルが少なく信頼性が高い

      
    ラウンドステー-構造が簡単で泥づまりを起こしにくい。さらに壊れても直しやすい

           
   ゴムフラップ-見た目は悪いが、悪天候の日や悪路ではこんなにありがたいものはない

 では、どんなドロヨケがサイクリングには相応しいかというと。

まず走行性能だけを考えれば、ドロヨケには何の利点もない。かえって重量面やわずかではあるが空気抵抗を考えると不利になる。その証にトラックレーサーやロードレーサー等競技用自転車にはドロヨケはない。ということで、ドロヨケは走行性能にできるだけ悪影響を与えないもの、つまり軽いものが好ましいという結果になる。

また結構ぶつけやすい位置にあるため、ぶつけても大きなダメージを受けないもの、また修理が可能なものが欲しくなる。となれば当然素材はアルミということになる。最近は樹脂製のドロヨケも出回っているが、衝撃を与えた場合割れる可能性があり、修理もむずかしく、さらに金属に比べ耐候性や耐油性、耐薬品性に劣るので、長距離のサイクリングにはあまり好ましいとは言えない。

ちなみに耐腐食性を考えれば、表面はアルマイト処理が施されているものがお勧め。

ドロヨケの内側はできるだけすっきりさせる。ダイナモコードや取付けネジ等は注意深く配置し、その数や体積も少なく抑えたい。ボルトの先端がナットよりも無駄に長く出ているなんていうことはないように。ちょっとしたものでも、泥づまりや異物付着の原因となる

同じような理由からステーもドロヨケの内側で固定されるようなものは避けたい。ラウンドステー式といってドロヨケの外側を回すようなタイプが好ましい。余談だが、これならばステーにダメージを受けても、同じぐらいの太さの金属棒さえ手に入れば簡単に直せる。マニアの中には最初からジュラルミン素材で自作している方もいるくらい。

フレームとの固定方法にはさらに注意が必要。マニアの世界で通常採用されている隠し止めという工法はとても美しいのだが、これが最もドロヨケにダメージを受けやすい。しかも皮肉なことにしっかり止めれば止めるほどドロヨケは落ちやすくなる。逆に見た目は非常に安っぽいが、マスプロメーカーが普通に採用するブリッジやクラウンの横穴にL字金具で止める工法が最もトラブルが少ない。これはドロヨケに加わる外力や振動で、固定部分に応力が集中することが原因のため。しかもアルミは弾力性に乏しく振動による繰返し応力に対して非常に弱い素材だからだ。そこで一旦少々ルーズにL字小物に止め、その小物を介してフレームに固定することで、ドロヨケに発生する応力を分散させてしまおうというのがこの方法だ。しかし何と言ってママチャリっぽくかっこ悪い。

そこで隠し止めで強度を維持することを考えると、まず思い浮かぶのがルネルスが採用する大きな補強版による止め方。大きな金属板と2本のネジでドロヨケの固定部分を補強することで、効率よく応力を分散させている。さらにルネルスはフレームとドロヨケとの間に革パッキンを挟み、二重に応力の分散を図っている。これならば見た目の美しさを損ねることなく、ドロヨケの寿命を伸ばすることができる。

ついでに、これもかっこの良いものではないが、前ドロヨケ後端部のゴムフラップはお勧め。これが有るのと無いのとでは、足元やトランスミッション部分の汚れ方に断然差が出てくる。当然ダメージの受け方にも差が出てくるというもの。

ドロヨケは扱い方にも注意が必要。他の部品やバッグ等がドロヨケに触れないように。また用途以外の余計な力はかけないこと。間違ってもドロヨケに荷物を載せるようなことや、ドロヨケをもって車体を持ち上げるようなことは・・・・・。

たまには裏面も掃除をしてやることが重要。ドロヨケに付着した泥やゴミは腐食につながり、腐食は強度低下や応力集中による破壊の原因にもなるからだ。

 

 旅行用自転車になぜドロヨケがあるのか? そしてなぜ必要か? おわかりいただけたであろうか。極限状態で使われる自転車だからこそ、どのようなことに対しても妥協はあってはならないはず。ドロヨケもまた同じ。冒険サイクリングを完遂するためにも、長距離サイクリングをより充実したものにするためにも、必要不可欠なパーツなのである。

                                         鈴木邦友

  
       長距離旅行用自転車にはしっかりしたドロヨケが不可欠


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