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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2015年3月10日)

        

  

分割式ドロヨケ

海外サイクリングの初日は、いつもドロヨケの鈑金作業だった・・・・・。

輪行で最も厄介なのがドロヨケの収納方法。特に飛行機輪行では、私たちが直接輪行袋を管理できないので、ことさら苦労をさせられることになる。

というのも、ドロヨケは大きなパーツであり、その収納方法としては車輪にかぶせフレームをサンドイッチするという形になる。そうなるとどうしても輪行袋の中では外角に位置してしまうことになるからだ。しかもドロヨケは薄くて柔らかい材質からできているため、衝撃には極めて弱い。どんなに厳重にパッキングしようとも、輪行袋の自重で潰れてしまうこともある。

さらに航空会社や空港での扱いは、どんなにいっぱい「壊れ物注意」のステッカーを張ろうと他の大型旅行用ハードケースとほとんど同じ。落とされたり、重ねられたり、ぶつけられたりで、ドロヨケは見るも無残な姿となってしまう。なにしろ一回の飛行機輪行で新品の輪行袋が穴だらけになって出てくるのだからそれも納得させられる。

毎回毎回こんな不愉快な目に合うのはかなわない。ということで、世界一周の時にはドロヨケはできるだけ手回り品として客室内に持ち込むことにした。もちろん金属探知機に反応してしまうので、そのたびごとに空港の職員に説明することとなった。時に客室への持ち込みを拒否されたこともあった。

 そんなトラブルを最小限に食い止める方法としてお勧めしたいのが分割式のドロヨケ。ドロヨケを短くしてできるだけ輪行袋の外側にならないようにする方法だ。輪行専用車であればこの加工はほぼ標準装備ということになるが、通常キャンピング車の場合は採用されることはない。というのもキャンピング車で輪行というのはまずあり得ず、また不整地を走ることが考えられる長距離用の自転車の場合、ドロヨケの裏側を複雑にしてしまうと泥づまりや腐食の原因にもなり、さらにその部分の強度が低下してしまうとも考えられているからだ。

ところが海外サイクリングとなると最低でも行きと帰りの2回は輪行ということになる。分割式のデメリットが現れる前にドロヨケがダメになるという状況に陥ってしまうわけで、それだったら分割式にしてしまった方が賢いということになる。

では実際分割式ドロヨケは多くのサイクリストから言われているように、長距離用の自転車にはデメリットが多いのだろうか。

まずドロヨケに泥が詰まりやすいという問題については、分割部分の構造にもよるが、経験上はっきり言ってつまり易いことは確かだ。ところが、分割式であるため、後部を外して泥を取り除くということができるので「つまり易いが取り除きやすい」ということになる。極端な話そのようなところを走行するときにははじめに後部を外してしまうということもいいかもしれない。

分割部分の腐食の問題については、最低でも2種類以上の金属で構成され、さらにそれぞれの金属間に水が浸み込みやすく、泥やホコリ等と混ざると乾燥しにくいことから、「異種金属接触腐食」や「隙間腐食」の温床になることが考えられる。ということで、その防止策としては定期的な手入れと金属と金属の隙間への油脂の塗布は欠かせない。雨天走行の多い時には、半年に一度ぐらいは分割部分を分解・清掃し、隙間になる部分を埋めるようにグリス等を塗布(隙間がグリスで満たされ水が侵入してこないくらい)しておくことを勧める。

重量の増加の問題も当然発生する。しかし長距離旅行用自転車では無視できる範囲だ。

最も重要なのは強度低下の問題。単純に考えれば、一つのものを切断して使うわけなので当然強度的には不利になる。ただしこの問題は分割部分の構造によって異なり、一概のそうとも言えないものも多くみられる。実際その分割部分を見てみると、その多くが23重構造となっている。しかもそれら分割部分は鉄をベースにした金属や厚手のアルミ板等本体よりも強度の高い金属で作られていることが多い。つまり、補強板が入っているのと同じ状態と見ることができる。普通のドロヨケで、振動や経年劣化、腐食等で最も壊れやすいのがこの部分なので、この部分が頑丈であるということは、長距離自転車旅行には好ましい結果となる。(旅行用自転車の最高峰と謳われたルネルスには、この部分に驚くほど大きな補強板が使われていた。)

と考えれば、逆に海外サイクリング車には分割式ドロヨケがお勧めということになる。

      
「片倉式」と呼ばれるシンプルな分割方式。分割部分がブリッジの下になるので分割であることすら気づかれない。右の六角ボルトを緩めると後ドロヨケ後部が後方へ抜ける。製作後20年が経過するが、トラブルはない。

では長距離旅行用自転車にも好ましい分割構造とはどのようなものかというと、ドロヨケ本体をそれよりも丈夫な材料でサンドイッチしていて、挟み込んでいる面積が広いもの。しかも分割部分やフレームエンドのステー固定小物は、車輪やその他の部品を外さなくても分割が可能なものが使い勝手が良い。もちろん分割部分にガタや異音がなくしっかり固定できるものであるべき。

メンテナンスは、輪行旅行が終わる毎に一度、輪行を全くしなければ12年に一度、輪行をしなくても雨天時の走行が多ければ半年に一度位は分解し、変形や腐食、分解がスムーズにできるかどうかを確認。さらに組立て時には分割部の金属接触面や隙間にグリス等を塗布し腐食対策も同時に行っておくことを勧める。

飛行機輪行の時には前ドロヨケと後ドロヨケ後部は車体から外し、それらを重ね合わせできるだけ輪行袋の外角にならない位置にセッティングする。

現在スポーツ車の多くがドロヨケの無いスタイルになった。そのため軽視されがちな部品となっている。ところが長距離自転車旅行ではこれが有ると無いとでは快適さや自転車のダメージに大きな差が出てくる。さらにサイクリストの健康状態まで左右することもある。アドベンチャーサイクリストの自転車にはなくてはならない部品ということになるのだ。

たかが輪行でドロヨケを失ってしまわないためにも、分割式ドロヨケはお勧めかもしれない。

      
外側から。2mm厚アルミ板、本体、本体と同し形状・厚みのアルミ板、5mm厚ジュラルミン板の四重構造
全ての材料をアルミでそろえたのは、電食(サビ)を防ぐため。



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