かけたベアリングボールとバラバラ状態のリテーナー(BB

              
         究極のベアリング使用法

 

クランクにガタが出はじめた。日常の足として使っているミニサイクルだ。まっ、たいしたことはなさそうだったので、しばらく放っておくことにした。

 ある日坂道を上っている時のことだった。ガリッという音とともにクランクに何かが挟まったような抵抗がつま先から伝わってきた。それからというもの力を入れると時々同じような状態になった。それから数か月後急にガタが大きくなったので心配になりBBをばらしてみた。なんと驚くことにそこから出てきたものは、バラバラになったリテーナーと二つに割れたベアリングボールだった。当然のことシャフトもワンもほぼ半周にわたり激しい虫食い状態だった。

毎日通勤で40km、ミニサイクルとしては想定外の使用だったのだろう。少しずつ傷んでいたベアリングボールに坂道で力をかけたのがとどめを打った形となり、ボールが砕け、その割れた破片がリテーナーに引っかかり、それを引きちぎってしまったようだ。以前にもベアリングが二つに割れたことは経験しているが、リテーナーがばらばらというのは始めてのことだった。

実はこのBBセット、2年ほど前に交換したばかりのもの。右ワンが真っ二つに割れるという事態に見舞われ、その時少々高級なものに交換しておいたものだった。意外に早い終末に内心がっかりした。

まさかそんな事態になってようとは思っていなかったし、替えのBBセットなど当然持ち合わせているはずもない。しかも明日もまた通勤で使わなければならないということで、かけたボールだけを交換するという急場しのぎ的な方法で対処することとなった。たぶんベアリングレースとボールにはかなりの負担がかかるだろうと思い、グリスだけは高級なものを使った。その後早々に交換しなければと思いつつ1年ほど走らせてしまうことになるのだが。

そんな状態のまま放っておいたこともありかなりガタが出ていた。で、先日新しい部品を準備し開けてみた。と、どうだろう、なんとも不思議な光景が目に入ってきた。なんということか、ワンとシャフトのボールレース部に激しくついていた虫食いが、滑らかな状態になっているではないか。ボールはというと1個だけが虫食い状態になっていたが、それ以外はなんともなかった。

自己再生力・・・・・? 偶然にも見つけた結果にそんなことを感じた。

もちろん一度傷んだベアリングが元に戻ることなどあるわけがない。決して正常な状態ではないはず。しかしこれが万が一修理交換などできない環境で発生していたらたら・・・・・。ふと世界一周の時のことが頭をよぎった。

 
                虫食い状態のBBシャフト

多分どのような国でもベアリングのボールと潤滑油ぐらいは手に入るだろう。ということはだ、たとえワンや玉押しにダメージを受けていたとしても、ボールの交換と注油という最低限の対処で走りつづけられるということになる。この辺が他の機械と違うところで、低回転のため焼きつくという心配のない自転車の場合、こんなことぐらいでなんとかなってしまうのだ。実際潤滑不足でベアリング部がさびてボロボロになりながらも走りつづけている自転車がこの世にどれだけあろうことか。

このことを覚えておけば、渡航先でJIS(英国規格)の交換部品を求め自転車屋を転々としたり、部品の空輸待ちをしたりなど余計な時間を費やさなくてもよいということになる。アドベンチャーサイクリングでの心配が一つなくなるというわけだ。

   
          こんな状態でも走りづけていた(ヘッド小物)

とは言えこれは極限の状況でのみ許される話。ベアリングは自転車の中でもとても敏感な部品。おかしいと感じたらすぐに開けてみることがベスト。放っておくとその状態はどんどん悪化してしまう。もちろん日頃の点検・整備も重要だ。

 以下にベアリング部のトラブルを少なくする方法を述べておこう。

 ベアリングを最高の状態に維持するために

1.ワンや玉押しを固定する部分の精度を高める。

2.ワンや玉押しは、緩まないようにしっかり締め付ける。

3.「ガタがないくらいにガタを出す」これが調整の秘訣。

 4.音がする、引っ掛かりがある、突然グリスがはみ出してきたなどいつもと異なる症状が出たら早急に分解整備をおこなう。

5.異常を発見したらセット(ワン、玉押し、ボール)で交換する。

6.グリスは高級なものを選び、タップリ使用する。

 7.ベアリングにダメージを与えてしまうのは、意外にも調整時や分解整備時、組立て時が多い。なので必要もなく調整や分解整備をしない。また作業は慎重におこなう。

8.作業は清潔な環境でおこなう。

 9.長距離アドベンチャーサイクリング時には、定期的にクランクシャフトとクランクの嵌合位置をずらし、ベアリングレース部のダメージを分散させる。

 10.自転車のベアリングの潤滑剤はグリスが一般的。だが、もしグリスアップ作業ができない環境で潤滑不足になったら油を外からさすだけでも十分。ガソリンスタンドで手に入るモーターオイルやギヤオイルは最高。ともかく油切れだけは起こさないよう注意する。

一般的な日本製旅行用自転車のボールベアリングサイズ

部   位

サイズ

その他稀なサイズ

ボトムブラケット

1/4

11

3/167/32

ヘッド小物

5/32

25

3/161/81/4

前ハブ

3/16

1011

5/647/321/4

後ハブ

1/4

9

15/645/323/16

フリーホイール

1/8

 

 

ペダル

5/32

1015

1/8


                                        鈴木邦友


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